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2018年9月26日

◆動物病院における医療過誤事件について(弁護士平山敏也)


・最近、ペットの医療過誤についての裁判が増えています。私が担当した事件で、動物病院の過失が認められたケースを報告します。
   

・依頼者のAさんは、飼っている犬(ヨークシャーテリアのアイちゃん)が食欲不振になったので大阪市内の動物病院に連れて行ったところ、検査の結果、腎臓の数値に問題があることが分かりました。
動物病院の院長はAさんに子宮全摘出手術を行なうことを勧めました。エコーの画像では子宮に悪いところが見当たらなかったにもかかわらず、Aさんに「腎臓は特別に悪くはない。子宮蓄膿症の疑いがある」と説明したのでした。
Aさんは「それならば」と子宮全摘出手術をしてもらうことにしました。
しかし、手術の結果、子宮に悪いところはありませんでした。しかも、その後、アイちゃんの腎臓の状態は悪化し、死ぬまで点滴を続けなければならないことになりました。
   

・「アイちゃんは、無関係の手術を行なったことにより、慢性の腎臓病(慢性腎不全)になってしまった」、私たちはそう考えて、動物病院に対して提訴することにしました。
私たちが問題にしたのは、①元々腎臓の弱っている犬に、不要な手術(しかも全身麻酔の)という負担をかけたこと、②手術の際に使うべきでない鎮痛剤を使用したこと、③手術後必要十分な点滴を行わなかったこと、の3点です。
   

・裁判の中では、多数の文献を提出し、腎臓の専門家である獣医師の先生に証言をしてもらうなどの立証を尽くしました。その中で「全身麻酔での手術は、腎機能が正常な犬であっても血圧低下により腎臓への血液量が低下し、腎機能は正常の50%程度に一旦は低下する」ということが明らかになるなどしました。
   

・一審の大阪地裁判決では上記の②と③について獣医師の注意義務違反を認め、これによりアイちゃんが慢性腎不全になったと判断し、116万5302円の損害賠償を認めてくれました。この種事案について100万円を超える賠償額というのは大変高額なもので、金額的には大変満足のいくものだったのですが、Aさんとしては上記①を認めてもらえなかったことに悔しさが残りました。

・そこで苦渋の決断の上、控訴しました。
大阪高裁は①~③の全ての注意義務違反を認めてくれたのですが、その一方で手術後の点滴費用等について注意義務違反行為との因果関係が認められないとして、損害賠償額を28万4260円へと大幅に減額されてしまいました。
実は、手術後転院した先の獣医師がアイちゃんの症状を非定型アジソン病と診断していた事情もあり、因果関係が認められるかには若干の不安があったのですが、それが的中してしまいました。非定型アジソン病というのは副腎の病気で、そもそもその診断自体に疑問があるのですが、私たちの主張は認められませんでした。
その後、最高裁に上告しましたが残念ながら認められず、高裁判決が確定しました。
   

・これまで民法では物と扱われていたペットですが、飼い主にとって、ペットは家族です。今回の地裁判決は、飼い主の思いに正面から答えた判決であったと思われます。高裁判決はやや揺り戻されてしまった印象もありますが、それでも獣医師の注意義務違反を3つの点で認めてくれました。
本件判決を踏まえて、今後、動物の医療過誤に関する裁判がどのような流れになるのか、注目されるところです。

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