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2018年6月27日

◆ある不起訴事案-司法取引の危険性(弁護士三上孝孜)


2018(平成30)年6月から、刑事裁判に、司法取引という制度ができました。
財政経済犯罪や薬物銃器犯罪などについて、被疑者・被告人が、他人の罪を検察官に供述すると、検察官は、供述した者を、不起訴にしたりすることができるのです。
そのためには、検察官と被疑者・被告人だけでなく、弁護人も同意して、3者で合意書面を作ることが必要です。検察官は、警察官に、この手続に協力させることもできます。
   

この制度は、被疑者・被告人に見返りを与えて、検察官が証拠を得やすくしようとするものです。
ただ、被疑者・被告人が嘘を言った場合、無実の人に罪を着せることになってしまう問題があります。
   

私が担当した大麻譲渡事件で、被疑者の嘘で、無実の若者が逮捕されたことがありました。被疑者が、大麻所持で逮捕されたとき、友人の若者から買ったと嘘を言ったので、その若者が大麻譲渡罪で逮捕されました。被疑者は、別の先輩から買ったのに、その先輩の名前を出すのが怖かったので、友人の名前を出したのです。
   

私は、逮捕された若者の弁護をしました。先に釈放されていた被疑者は、嘘を言ったことを別の友人に打明けていることが分かりました。そこで、被疑者と打明け話を聞いた友人に事務所に来てもらい、被疑者から本当の話を聞きました。
被疑者は、嘘を言って申し訳ないと謝りましたので、その様子をビデオにとり、その話を供述録取書にまとめ、被疑者に署名してもらいました。
   

これらの新証拠を検察官に提出したところ、検察官は、被疑者に確認の上、若者を不起訴処分にしました。
   

司法取引にはプラス、マイナスの両面があります。

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