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2018年11月7日

◆遺言書と遺留分(弁護士三上孝孜)


○遺言書を作る場合、通常、自筆証書遺言と公正証書遺言が考えられます。
自筆証書遺言は手軽ですが、全文及び日付を自分で書き、署名、捺印しなければなりません。なお、最近民法の相続法の改正がなされ、自筆証書遺言に添付する財産目録は、パソコンで作成したものや預金通帳のコピーなどがみとめられます。但し、財産目録には署名押印をしなければなりません。
また、執行するには、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
   
○公正証書遺言は,公証人役場で、証人2名の立会で、作成されます。
原案は弁護士などに作ってもらい、その弁護士を、遺言執行人に指定しておくというのが確実な方法です。
   
○いずれの方法で遺言書を作るときも、全ての遺産を、特定の相続人に相続させると問題が生じます。
相続人には、遺言書でも排除できない最低限の権利があります。これを遺留分(いりゅうぶん)と言います。
遺留分は、原則として遺産の2分の1です(但し、親や祖父母らのみが遺留分権利者の場合は3分の1)。
もっとも、遺留分の権利者は,子及び親や祖父母ら直系親族だけであり、兄弟姉妹に権利はありません。
遺言書で特定の相続人に、遺産を全て相続させると書かれていても、子あるいは親らは、遺留分の回復を求める遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求をすることができます。時効期間は原則1年です。
   
○私が担当したケースでは、親が、長男に全ての遺産を相続させるという自筆証書遺言を作っていました。
それを知った他の兄弟からの依頼を受け、私は、遺留分減殺請求の調停申立を家庭裁判所に起こしました。長男は、調停に応じざるを得なくなりました。
家裁において、遺産の不動産を鑑定する等の手続の後、遺留分相当部分を他の兄弟が相続することで最終的に調停が成立しました。
   
○遺言書を作成するときは、遺留分相当部分を、他の相続人の相続分として残しておくことが、家族間紛争の未然防止に役立つと思います。
   
○なお、最近の相続法の改正により、遺留分制度については、遺留分減殺請求を受けた者の請求により、裁判所が遺留分の支払いについて、相当の期限を許与することができることになりました。
また、配偶者居住権の新設などの新しい制度が導入されています。
改正された相続法は、2018年7月に公布され、法務省のホームページでは、施行期日は、原則として公布の日から1年以内で政令で定める日とされています。
遺言方式の緩和は、2019年1月から施行され、配偶者居住権の新設は、2020年7月までの政令で定める日となっています。

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