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2012年11月8日

◆住居侵入、強制わいせつ未遂誤認逮捕事件!(弁護士三上孝孜)


1 はじめに
私が、被疑者国選弁護人として、担当した誤認逮捕事件が、本年4月に不起訴処分となって解決したので紹介します。

2 任意捜査もなくいきなり逮捕
被疑者とされた本人は、30代の男性です。
昨年9月夕刻、東大阪市の住宅で、女性が、侵入してきた見知らぬ男性に体を掴まれたが、大声を上げたので、その男性が逃げたという、住居侵入、強制わいせつ未遂事件が発生しました。
犯人は中々捕まらず、本年3月、布施署は、裁判所から逮捕状を取って、本人の自宅へ来て、逮捕してしまいました。

本人には、事前に任意出頭の呼出しはなく、事情聴取されたこは一度もありません。
本人にとっては、何ら関係のない事件で、いきなり逮捕されたことが晴天のへきれきであり、大変なショックを受けました。
私は、逮捕後、法テラスを通じて、本人の国選弁護人となりました。
裁判所は、検察官の請求により、本人の勾留決定をしました。

3 アリバイ証拠の判明
勾留されている間に、家族が、本人の、通院していた脱毛サロンの予約カードを自宅で見つけました。そこには、犯行日の通院予約が書かれていました。本人は、男性ですがボディビルのため、2・3ヶ月ごとに胸などの電気脱毛に通っていたのです。
さっそく、私は、家族と共に、大阪市北区梅田の脱毛サロンに出かけ、脱毛技能士さんに面会して、当時のカルテのコピーを頂きました。そこには、犯行時刻ころに、約4時間の脱毛施術がされたことが書かれていました。明白なアリバイ証拠が見つかったのです。

4 勾留中の釈放
私は、このカルテなどを裁判所に提出し、勾留取消請求をしました。勾留した裁判官は、そのカルテなどを見て、驚いていました。裁判官は、勾留取消に前向きの姿勢を示しました。
すると、検察官から、本人を釈放する、との連絡が入りました。検察官も、カルテなどのアリバイ証拠を見て、誤認逮捕を認めざるをえなくなったのです。
こうして、勾留決定から7日目に、本人は、検察官から釈放されました。そして、本年4月、検察官は、嫌疑なしを理由に、本人を不起訴処分としました。

5 捜査の問題
本年3月、足利事件の再審無罪判決があり、菅家さんの無実が明らかになったのは、うれしいことです。

菅家さんは、事件に関係がないのに、誤認逮捕されたのです。
ところが、いまだに、菅家さんの場合と同じような誤認逮捕が、大阪府警で行われたことに驚いています。
警察や検察は、なぜ、本人を逮捕したのかを、まったく明らかにしません。
本人に思い当ることを聞いてみると、事件の前後ころ、夜中に、ビデオ店に行くために、現場付近を自転車で通行したことがあり、そのとき、パトカーに職務質問されて、住所・氏名を言ったことがある、というだけです。
おそらく、警察は、何らかの方法で、被害者に対し、本人の写真などを見せ、その際に、被害者は、本人を犯人として特定した、と思われます。
しかし、この程度のあいまいな証拠で、人が逮捕されたのでは、たまったものではありません。
誤認逮捕は、重大な人権侵害です。誤認逮捕をした警察や、それを認めた検察、裁判所の責任は、重大ですね。

 

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