1. HOME
  2. お知らせ

2019年1月16日

◆離婚にまつわる問題-法的に面倒な「思い出の品」の返還(弁護士小林徹也)


■離婚するにあたっては,財産分与,慰謝料,お子さんがいる場合には親権や養育費など様々な問題が発生しますが,ここでは以外と見過ごされがちな小さな問題ですが,当事者の方にはいつまでも心残りになっていることを御紹介したいと思います。
   

■離婚の前に別居することが多いと思われますが,預貯金や証券,保険などその存在が銀行や証券会社などの第三者によっても証明できるものは,一方当事者がその存在を否定しても,場合によっては裁判所を通じて調査するなど,対応の方法があります。
   

■ところが,学生時代のアルバム,卒業証書,友人からのプレゼントなど本人にとってはとても大事な思い出の品であるものの,客観的な財産価値としてはほとんどないうえに,本人以外の第三者によってはその存在の証明が困難なものが多いこともおわかりいただけると思います。
そして,別居するような場合には,着の身着のまま,とにかく応急の生活のことしか頭にないことが通常で,このような思い出の品にまで考えが至らないのはある意味当然です。
   

■しかし,いったん別居して,調停などを進めるうちに一段落した時,「そういえばあのアルバムは返してもらえるのかしら」などと考えるようになり,その時になって相談を受けることがよくあります。そこで,相手方(多くは夫)に返還を求めるのですが,調停などの法的手続にまで至っているこじれた関係にある場合,夫はなかなか返還に応じません。
それでも,その存在を認めているのであればまだ請求の方法はありますが,困るのは,「そんなものはない」とか「すでに返した」などと言われた場合です。
相手方が保管していることを証明する責任は,返還を求める側にあるのですが,これはそう簡単なことではありません。
また,裁判所なども,大きな財産価値のあるものについては取り合ってくれますが,ちょっとしたアルバム程度だと,「それどころじゃあないでしょう」という感じで,あまり真剣に取り合ってくれないことが多いのです。
   

■離婚自体はうまく解決できても,このような思い出の品が結局最後まで返してもらえず,小さな心残りをもったままの依頼者の方を何人も見てきました。
そこで,私は,別居を検討されている相談者の方には,「大変な時にこんなことをご説明するのは何ですが,」と前置きして,「あとで返してもらうのが大変なので,ちょっとした思い出の品なども,大事なもので,かつ持ち出せるなら一緒に持ち出したほうがよいですよ」と助言するようにしています。

相談内容のご案内