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2019年8月27日

◆夫の「モラハラ」と離婚(弁護士小林徹也)


■最近,「モラハラ」という言葉を耳にすることが多くなりました。
これは,「モラル・ハラスメント」の略であり,「言葉や態度で巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力」と定義されています。
この言葉や記事を見て,私が思い浮かべるのは,私が過去に扱ったいくつかの離婚事件における夫です。
私が扱った離婚事件によく見られる夫は,このような「モラハラ」の常習者であることが多かったのです。
   
  
■このような夫の特徴として,まず,自分が絶対正しいと思いこんでいることが挙げられます。
妻が少しでも反論しようものなら,1時間も2時間も延々と,妻が疲れて「その通りです」と認めるまで自分の意見を主張し続けます(ほとんど徹夜で話しを聞かされた,という依頼者もおられました)。
このようなことが何度も,何年も続くものですから,妻はそのうち,「マインドコントロール」されてしまい,夫の言っていることは常に正しく,自分が叱られるのが当然だと思いこむようになってしまいます。
家庭では,夫が主導権を握り,妻は夫の機嫌ばかりを伺うようになっていきます。
夫は,妻の行動にいちいち文句をつけたり,舌打ちをしたりします。また,機嫌の悪い時は無視を決め込みます。
これに対して,妻は,「自分が悪い」と思いこまされて,限界に至るまでそのような生活を続けるのです。妻は,とにかく一日問題なく過ごせればそれでいい,という心情になってしまいます。
依頼者の中には,夜寝る時,「明日は無事に過ごせるだろうか」,「このまま目が覚めなければいいのに」などと毎晩思っていたという方もおられました。
   
  
■そして,限界を超えてどうにも堪えられなくなり,離婚を考えて弁護士のところに相談に来て,「そのような夫の態度は異常ですよ」と言われてはじめて夫の態度に疑問を持ち始めます。
もちろん,長年の「マインドコントロール」は簡単には解けません。
別居して,調停を起こして打ち合わせを重ねる中で徐々に,ようやく「夫はおかしかった」ということを実感していかれます。
   
  
■他方で,夫は,それまで従順だった妻が,はっきりと主張や反論するようになることから「弁護士が言わせているに違いない」と思いこむことがよくあります。
そこでよくある夫からの要望は,「直接妻と話させてほしい。直接に話せば理解してもらえる」ということです。
そのような場合,私は,依頼者とよく相談したうえで,了解を得られれば,調停で直接面談させるようにしています。
そこで,夫は,「マインドコントロール」が解けて自立した妻に愕然とするのです。
   
  
■このような男性は,概して世間体はよく,会社などでは好印象を持たれているようです。
従って,いざ調停や裁判になるとあまり無理は言いません。
よく依頼者である妻が,「刃向かったら何をされるか分かりません」と怯えておられることがあるのですが,少なくとも私が扱った事件では,事前にどんなに電話などで威勢のいいことを言っていても,調停や裁判で無茶なことをした男性はいません。
   
  
■もし夫婦関係で悩まれており,離婚を考えているものの,「本当に自分は間違っているのだろうか」あるいは「夫には刃向かえない」と思いこんでおられる方がおられましたら,一度ご相談ください。多くの場合,あなたが正しいのです。

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