○あるブティックの女性経営者が、10年来の女性顧客の洋服代の未払いに困っていました。
顧客は、洋服代を支払うときに、新しい洋服を掛買するなどしていたので、未払残高が増えていきました。
ブティックにとっては大事な顧客ですので、強く催促することを控えていました。
ところが、ある時期から顧客は、ブティックに来なくなりました。経営者は、心配して何度も手紙を送り、支払いを催促しました。それでも一向に支払いがないので、弁護士に相談して裁判を起こしました。
○これに対し、顧客は2年の消滅時効を主張してきました。最後の売買から2年が経過していたのです。
経営者は、何度も手紙で催促しているので、時効で残金が消滅することはないと思っていたのです。
裁判では、判決になれば、ブティックの敗訴が予想されましたが、裁判所の勧告により、顧客も残代金の一部を支払うことで和解が成立しました。
○現在の民法では債権の消滅時効は原則10年になっています。
ところが、例外的に、短期の時効制度があり、商品の売買代金などの消滅時効は2年です。又飲食代金などの消滅時効は1年になっています。
○消滅時効は、手紙で催促しただけではとまりません。
時効にかかりそうになると、内容証明郵便で催促し、それから6か月以内に裁判を起こせば、時効にかかりません。これを時効の中断といいます。
○なお2020年4月から民法の債権関係が大きく改正されます。
消滅時効は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに適用されることになりました。
商品売買代金などの短期の時効はなくなりました。商品売買代金などの消滅時効は、原則5年に延びたわけです。又貸金などの消滅時効も原則5年となります。