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2012年10月30日

◆家庭内紛争と解決(弁護士三上孝孜)


最近、相談を受けたり、裁判を依頼されたりしたケースの中で、親子間の金銭贈与をめぐる紛争や相続をめぐる紛争などの家庭内紛争が増えています。

私が担当した裁判では、70歳代の母親が、50歳代の長女に対し、数年前に贈与した多額の現金(銀行から下ろした預金)の返還請求の裁判を起こしてきたケースがあります。

贈与した当時の母親の気持は、長年、世話になってきた長女に対する感謝と長女と同居している孫娘の将来の結婚資金として、預金を贈与したと思われるのです。母親は、銀行へ、長女と一緒に行き、預金を下ろして、長女の口座に振り込んで贈与しました。

ところが、その後、母親は、贈与を否定し、長女が、無断で自分の預金を下ろしたと主張してきました。そのバックには、長男(長女の弟)の反発と返還請求の勧めがあったと思われました。

私は、長女の代理人を務め、贈与の有効性を主張しました。地裁の判決では、長女への贈与の有効性が認められ、長女が勝訴しました。地裁判決に対し、母親が、大阪高裁に控訴しました。高裁では、裁判官の和解勧告があり、長女が譲歩し、贈与の有効性を前提として、ある程度の預金を母親に返還することで和解が成立しました。こうして事件は円満に解決しました。

ほかにも、母親が、娘や息子を訴えて、過去に贈与した金銭の返還を請求するケースがあります。

これらの紛争の原因はどこにあるのか、どのような解決が妥当なのか、色々と考えさせられます。紛争の原因として、高齢者の記憶・判断能力の減退、背後にいる娘、息子間の利害対立、将来の相続をめぐる争い、介護問題などがあるように思われます。

これらの家庭内紛争を解決するためには、弁護士にも、法的な判断のみならず、円満な家族関係を取り戻すための、健全な良識が求められるように思います。

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