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2019年4月15日

◆受け子国際版事件の弁護活動(弁護士三上孝孜)


○最近私が国選弁護で担当した、受け子の国際版と言えるような事件を紹介します。
香港から来日した16歳の少年が、福岡の民泊のマンションで受け取った、シンガポール発の貨物の中に、覚せい剤が入っていたというものです。
少年は日本語を話せません。
実は関空の税関が、貨物の中に覚せい剤を発見し、警察が、コントロールドデリバリーの手法(麻薬捜査の手法の一つ。麻薬の密輸を察知した場合、捜査当局はわざと押収せず、運び人を泳がせて背後の組織を一網打尽にするもの。)で、少年が受け取ったところを逮捕しました。
罪名は麻薬特例法の規制薬物受取り罪です。
   
○少年は、日本に観光に来たのであり、貨物の中身は知らないと言い、否認しました。勾留延長までされましたが、処分保留となりました。
ところが警察は、同じ事案に、覚せい剤の営利目的密輸入罪を適用し、再逮捕しました。
   
○私は、少年は覚せい剤が入っていたことを知らなかったと主張して、最初の事件の勾留に対し、準抗告を申立て、勾留取消しを請求したり、再逮捕・再勾留に対しても、準抗告を申立てたりして、熱心に弁護活動をしました。
検事からの再勾留の10日間の延長請求に対し、私が却下を求める意見書を出した結果、裁判所で、延長は認められましたが、期間は4日間に短縮されました。その結果検事は、早期に捜査を打切らざるを得なくなりました。
   
○少年は、否認、黙秘で、調書の署名も拒否しました。勾留延長期間満了日に嫌疑不十分で不起訴処分となり,家裁送致にもならず、釈放されました。
これらの事件では、覚せい剤が入っていたことを知っていたことが証明されないと罪にならないのです。
   
○この間香港では、家族が、少年は行方不明になったと心配し、警察に捜索願を出しました。
ところが、日本で逮捕されていることが分かったのです。家族は、来日して、私の事務所に訪ねて来られました。
少年は、釈放され、家族と共に香港に帰っていきました。
私は、少年に、通訳を通じて、二度とこのようなことにかかわるなと諭しました。少年は、神妙な顔でうなずいていました。
   
○最近、オレオレ詐欺の受け子に、事情の知らない少年を使う事件が多発しています。
今回の受け子の国際版とも言っていいような事件も珍しくありません。

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