2012年11月8日

◆苦しみに寄り添う弁護(弁護士小林つとむ)


 

最近の私達がとり扱う事件の、多くの部分に共通しているのは、貧困の問題である。
それは刑事事件であれ、一般民事や家事事件であれ、その発生の直接、間接の原因、底流には必ずやこの絶望的なまでの社会的要因が存在している。

それは最近の新聞に報ぜられる「生活保護世帯8年連続最多更新」とか、「一人親家庭の子どもの貧困率58%」とか、ついには「自殺者過去最悪ペース」などの記事からも当然のことかも知れない。

おそらくは多くの同業弁護士の仲間が、この現実に直面し、苦悩し、取組んでおられることと思う。

一方でわれわれ弁護士は、この貧困問題を克服するための、制度上の改革を目指して、組織的にも大きな努力をしなければならないが、他方では目の前のどの事件にも、その人たちの苦しみや傷みに共感し、寄り添うような心からの弁護、それは私たちの原点として忘れてはならないことだとおもう。

以下は、そのような弁護がある程度は、できたかと思う事件のこと。
先月のある日、ある国選事件の被告人から受取った手紙。
「拝啓、先生この度は私の弁護をして頂き誠にありがとうございました。誠実な対応にとても感謝しています。今日が控訴期限となりましたが、控訴せずに刑を受けることにしました。
先生のお陰で刑期も半分(2年半)になりましたし、一日でも早く家族のもとへ帰ろうとの思いからそうすることに決めました。
弁償の件、家族への対応などの尽力に感謝してもしきれません。
先生に弁護をしていただいて本当に良かったと思っています。
本当にありがとうございました。
季節の変わり目となり風邪などをひかないようご留意をいただき、お身体ご自愛下さいませ。
書中にてお礼を申し上げます。
敬具 」

これは31才のパチンコ店員、こどもの頃からの音楽好きで音楽大学を目指して失敗、アマチュアバンドを作って活動していたが、ライブハウスでのイヴェントに参加する費用に行き詰って、コンビニストアで包丁をもって現金9万円を奪って逮捕された。

本当にさまざまな人生が、そしてさまざまな事件がある。
どこまで私たちが、この人たちの新しい人生への再出発の役に立つことができるのだろうか。
いつもきびしく自らを省み「弁護とは」を問い続け、この道を歩みつづけ、そして引き継がれればと願っているものです。

 

相談内容のご案内