■よく会社などでのパワーハラスメントのご相談を受けます。精神的に疲弊され来所される場合も多く,私としても可能な限りお力になりたいと思っています。
法律家である弁護士が関与する態様としては,窓口となって,当該パワーハラスメントを行っている上司などと交渉する,あるいは会社に対し改善を求めるなどです。
■ただ,「加害者」と交渉を行うとしても,法律の専門家である弁護士としては,最終的に訴訟となった場合にどのような判断が下されるか,という点を見据えなければなりません。
相手方も,話し合いを拒否した場合どのようになるか,弁護士に相談することが多いからです。
■この場合,当該パワーハラスメントが訴訟において「違法」と判断されるかどうか,が重要なメルクマールとなります。
ここで,「違法」というのは,もし裁判所によってそのように認定されれば,損害賠償義務が発生し,被害者に対し,(金額はともかく)お金を支払わなければならないということです。
そして,この支払いを拒否すれば,加害者はその財産を強制的に売却されたりするという大変大きな効力を持ちます。
例えば,違法と認定された判決に基づいて,加害者の会社に通知を出して,その給料を被害者に支払わせる,ということまで出来てしまいます。
■逆に言えば,ここまで大きな力を被害者に与える以上,裁判所としても,それほど簡単に「違法」とは評価しません。
例えば,「こんな仕事を続けているようでは会社にはいてもらえない」などと言われれば,言われた方は大変ショックを受けるでしょうし,人によっては精神的な疾患を発症する方もおられるかもしれません。
しかし,だからといってこの言動のみをもって,裁判所がパワーハラスメントと評価する可能性は低いのです。
実際に相談者がどのような仕事をしていたのか,他の社員に対してはどのような評価が下されていたのか,他にはどのような言動があったのか,など様々な事情が加わって,違法と評価される余地はありますが,単に仕事の評価が低かった,そのことを言葉で指摘された,というだけでは違法にはなりません。
■私がこれまで扱った事件でも,例えば,当該業務とは全く関係がないにもかかわらず,当該社員の以前の職歴を指摘し,「これだから教師上がりは困る」などと叱責したような事例がパワーハラスメントと認定されていますが,業務について少々厳しいことを言われてもそれがパワーハラスメントと評価されることは少ないと思われます。
■いずれもしても,当該言動がパワーハラスメントと評価されるかどうかの判断には専門的な知識が必要となります。判断に迷われている場合でもご相談ください。