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2017年1月6日

◆カルテの証拠保全について(弁護士小林徹也)


■ 医療過誤訴訟にカルテは不可欠
 医療過誤など医療に関する責任追及には,当該患者の医療記録(カルテ)の検討が不可欠となります。
 医療過誤訴訟を提起する場合,裁判所より必ずカルテの提出を求められます。
 カルテについては,患者(あるいは遺族)が,病院に対して任意に開示を求めることができます。原則として,病院はこれを拒否することはできません。
   

■ カルテの収集方法
 具体的な収集方法ですが,病院に申し込むとコピーをして渡してくれるところもあります。この場合,実費として,カルテ1枚につきコピー代10~30円を徴収されることが多いようです。
 また,これも病院によりますが,カルテの開示だけを受けて,それを当該病院の一室で自分でコピーしなければならない場合もあります。
 コピー機がないような病院で,しかもカルテ自体の貸出を認めない場合には,デジタルカメラを持って行き,その場で撮影する場合もあります。
 いずれにしても病院によって対応が異なりますので,事前によく確認してください。
   

■ カルテの証拠保全について
 カルテが開示前に改ざんされることを危惧して,証拠保全という手続を行うことがあります。
 これは,裁判所に申し立てて,日程を調整し,事前に病院に知らせることなく,ある日突然に,裁判官,書記官,代理人らで当該病院を訪れ,カルテを開示させるものです。
 基本的に病院はこれを拒否できませんので,事前の改ざんの危険性が減少します。
 但し,申立さえすれば簡単に認められるというものでもなく,裁判所に対し,ある程度具体的に,医療過誤等の内容を書面で説明する必要があります。
 このような作業は,専門家である弁護士に依頼したほうがスムーズです。
   

■ いわゆる電子カルテについて
 かつては,手書きのカルテが多く,証拠保全をする場合でも,改ざんの痕跡がないかを,現場でかなり細かくチェックする必要がありました。
 しかし,最近はいわゆる電子カルテが増え,改ざんの危険性はかなり減少したように思います。
 大きな病院にある一般的な電子カルテのシステムでは,一度入力したものは,書き直しても原則として消えません(通常,当該箇所に線が引かれ訂正したことが分かるようになっています)。
 また,入力する際には,職員個々人が持つID番号を入力しなければならないことになっており,誰が入力・訂正したかも明らかになります。
 確かに,このシステム自体を不正に書き換えるということも理論的には考えられないことはないですが,そのようなことをするためには,システム自体を作成した業者の協力が必要となる可能性が高く,そのようなリスクを冒す業者がいる可能性は低いのではないでしょうか。
 従って,電子カルテ自体については証拠保全の必要性はそれほど高くないようにも思います。
   

■ 手書きの書類について
 ただ,電子カルテが導入されている病院でも,患者本人の同意書などは手書きされたものをスキャナーで読み込んでいる場合が多く,その同意書自体に疑義があるような場合には,その原本を確認する必要があります。
 この意味では,電子カルテのシステムを導入している病院においても,証拠保全の必要性はあると思います。
   

■ お気軽にご相談を
 いずれにしても,どの方法を採るかはケースによって異なります。お気軽にご相談ください。
 但し,入手したカルテを元に損害賠償請求を求める場合には,さらに専門的な検討が必要となり,その場合には協力していただける医師の存在が不可欠となります。
   

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