1 損保会社(以下では「A社」といいます)を相手にした裁判で、1審に続き高裁でも勝訴しました(大阪高裁判決・確定)。
事案は以下のようなものです。
依頼者のお父さん(以下では「X氏」といいます)は、小型移動式クレーン(ユニック)車を操作中に、クレーン車が倒れてしまうという事故により亡くなってしまいました。
亡くなったX氏は損害保険に加入していたので、依頼者が保険金を請求したところ、A社に支払いを拒まれたのです。
2 A社が保険金の支払いを拒んだ理由は、保険約款の中に免責事由が定められており、「法令に定められた運転資格を持たないで自動車等(自動車または原動機付自転車)を運転している間」の事故について保険会社は免責される(保険金が支払われない)旨が定められており、X氏の事故はそれにあたるから、というものでした。
3 この支払い拒絶には2つの問題(論点)があります。
(1)1つめは、実際にはX氏は小型移動式クレーンの資格を有していたと思われるのですが、「資格証や資格を取得した記録などが見つからなかった」という理由で、無資格扱いされ、免責事由にあたるとされてしまったことです。
このような保険の免責事由について裁判で争われた場合、保険会社の方がその免責事由に該当する事実を証明しなければいけません。なので「資格を持っていたのか持っていなかったのかよく分からない」という場合には保険金を支払わなければならないことになります。
(2)もう1つは、約款の解釈の問題です。
そもそも、車から降りて、止まっている車に搭載されたクレーンを操作していた時の事故が「自動車等を運転している間」の事故にあたると言えるのでしょうか。もちろんクレーンの操作も「運転」と言えなくはないでしょうが、「自動車等を運転している」という言葉からイメージされる行為とは随分違う印象を受けます。
しかも、別の側面として、小型移動式クレーンの資格は比較的容易に取得できて、無資格操作の際の罰則も自動車の無免許運転の場合よりも軽微であるという事実もあります。
そう考えると、小型移動式クレーンの操作を自動車の運転と同視することは出来ないように思います。
4 依頼者は、A社の保険金不払いに納得できず、そんぽADRセンター(損害保険についての仲裁のための機関)に申立てをしましたが、和解はできませんでした(ここで示された和解案の内容は公開を禁止されていますので、ここでは報告できません)。
そこで、当職と中峯将文弁護士が受任して、保険金請求訴訟を提起したのです。
5 裁判では、主として上記の第1点について争われました。
(1)小型移動式クレーンの資格の記録については、建前としては指定保存交付機関(厚労省から委託を受けた民間の機関)もしくは現在教習を実施している機関に保存されている形になっています。
そこで、A社は「X氏が資格を有していなかった」と主張して、指定保存交付機関に加えて様々な教習機関に照会をして、「X氏の資格に関する記録が見当たらない」との膨大な回答書を裁判に提出してきました。
(2)しかし、小型移動式クレーンの教習を行なう機関は多数あり、既に廃業している機関も多々存在します。それらの機関が資格に関する記録をきちんと管理していて、廃業時に指定保存交付機関(それが出来る前は労働局)にきちんと引継ぎをしているのかについては、大いに疑問です。実際、当職らが調査した範囲でも、引継もなされないまま廃業しているケースが存在することが明らかになりました。
(3)もちろん、相手方の主張をつぶすだけではなく、積極的な立証活動も行ないました。当職らは、①X氏が長きに渡って小型移動式クレーンが必要な仕事に従事していたこと、②実際に操作していた場面でも上手に操作していたのを家族が見ていること、③X氏がコンプライアンスにも厳しい人物であったこと、④事件当日は別の方法で仕事をすることも可能だったのにあえて小型移動式クレーンを使用したこと、などを示して、X氏が実際に資格を取得していた可能性が高いことを明らかにしました。
6 判決は、1審、2審とも依頼者の請求額全額を認める完全勝利判決でした。
(1)その理由としては、1番目の論点について、「『X氏が資格を取得していなかった』とは認められず、免責事由にあたるとはいえない」ということでした。
これは、弱い立場の側に寄り添いつつ、事案の真相を考え抜いて出された素晴らしい判決であったと思います。
(2)もっとも、2番目の論点(約款の解釈の問題)については1審、2審ともに、小型移動式クレーンの操作が「自動車等の運転」にあたること、従って小型移動式クレーンの資格を持たずに操作していたときの事故であれば保険金が支払われないことを認めてしまっています。これは不当な判断と思われます。
実はこの点には先例(東京地裁平成9年3月13日判決)があり、そこでも同様の判断がなされていました。今回の判決はその判断に引きずられてしまったのかもしれません。
ただ、今回の判決の当該判示は、保険会社側敗訴判決における理由中の判断に過ぎません。判決の結論に直結していない、いわば傍論に近い性格のものです。ですから裁判例としての価値は高くないと思われます。次にこの論点が問題になったときには、別の判断がなされる可能性もあるのではないでしょうか。
7 それにしても考えさせられるのは、A社の態度です。
言うまでもなく、保険会社は多くの保険加入者から保険料を受け取って、それを保険金支払いの原資としているのですから、どのような請求であっても保険金を支払えばいいというわけでありません。例えば保険金詐欺などの不正請求には毅然とした対応が必要です。ですから、本来支払うべきでない保険金を支払わないことは保険会社として当然の行為でしょう。
そのように考えるならば、A社が当初、依頼者による保険金請求に対して支払いを拒んだことについては理解できないわけでもありません。
しかし、A社はその後、ADRで和解を拒み、訴訟の1審で裁判官から和解を勧められてこれを拒み、1審判決が出ても控訴し、高裁で裁判官から金額を示して和解案が出されてもこれを拒んで、今回の判決に至ったのです。おそらく安くない弁護士費用を使ってのことです。そこまでして支払いを拒まなければならないものでしょうか。
亡くなったX氏は、A社と契約して、亡くなるまで保険料を支払ってきた、いわば「お客さん」です。A社にとってのお客さんが亡くなって、その遺族が悲しみに耐えながら保険金の請求をしているのです。もちろん詐欺などの故意的不正請求を疑う余地は1ミリもありません。そうであれば、第三者の意見を受け入れて保険金を支払うことに、どのようなハードルが存在したというのでしょうか。
A社には企業の社会的責任について真剣に考えていただきたいと切に願います。
以上
■私のみならず,一般に弁護士に相談する場合のちょっとした注意点についてお話ししたいと思います。
■他人とのトラブルが生じた場合に,その根拠(分かりやすく言えば証拠となるものです)となる文書があることも多いでしょう。
典型的なものは,お金の貸し借り(金銭消費貸借契約)における契約書や売買の契約書などです。
あるいは,医療に関するトラブルでのカルテや診断書などもこれに当たるでしょう。
また,夫婦のトラブルについて,妻がつけていた日記やメモなども大事な根拠となり得ます。
■これらは通常,事案の理解や解決に役立つことが多いので,是非お持ちいただきたいのですが,注意していただきたいのは,これらの文書そのもの(「原本」と呼びます)に,説明のために手書きで書き込むことは避けていただきたいのです。
というのは,「原本」は通常,まさにその時に作成されたそのままのものであることで意義があり,証拠となりうるのです。
相談に来られる方が,「そのままでは分かりにくいだろう」という「親切心」でいろいろ説明を書き入れたりすることがあるのですが,これはかえってマイナスになることがあります。
例えば,妻がつけていた夫の言動に関するメモは,まさにその時の気持ちのままに記載されているからこそ,例えば慰謝料に関する証拠として貴重なのです。
分かりにくいからといっていろいろ説明を加えると,分かりやすさは増すかもしれませんが,証拠としての「生々しさ」が失われかねません。
せっかくの,証拠の価値が下がってしまうこともあるのです。
また,いざこれを証拠として裁判などに提出する際,裁判官としては,どの記載が当時書かれたもので,どの記載が説明のために書き入れたものが分かりにくく,従って,弁護士が,「この部分は当時のもの,この部分は今回説明のために書き入れたもの」というようなことを,わざわざ文書で説明しなければならず,かえって分かりにくい証拠となりかねません。
■もし,説明が必要であると思われた場合は,原本には手を加えず,コピーを取り(最近はコンビニでもできますね),そのコピーに書き込んでください。
弁護士からのお願いです。
■この世の中にトラブルはたくさんありますが,実は弁護士が解決できることはそれほど多いわけではありません。
「法律」という強制を伴う大きな力を使うものである以上,微妙な関係の調整は弁護士では難しい場合が多いのです。
■例えば,近隣トラブルの相談は多いのですが,その際,「今後も長く付き合いを続けていくお隣さんなので,あまり対立せずに解決してほしい」という「注文」がよくあります。
しかし,おわかりいただけると思いますが,弁護士が登場してしまうと,どうしても大げさになり,相手方も身構えます。
そして,相手方も弁護士を登場させてしまうと,ある意味対立は決定的になります。
このため,「法律」という強い力を使うほどのトラブルかどうか,が難しい判断となることがあります。
■また,離婚の場合でも,財産分与・養育費・慰謝料などの点において,判決にまで至れば,数字として明確に現れます。
しかし,例えば,子との関係は一生続きますが,その関係の適正化は,法律によっては十分解決できません。
■つまり,これまで決定的に不利だったものが,弁護士の「登場」で大逆転,ということもそれほどあるわけではありません。
特に近年,ネットによる情報収集が簡単になってきていますから,例えば,借金の返済をしなくてすむようになる時効制度なども,わざわざ弁護士がお知らせしなくとも,大抵の方はご存知です。
■ただ,それでも,新聞などを見ていると「ああ,こんなことがあるなら弁護士に一言相談してほしかった」と思うことがまだまだあります。
例えば,若い女性が,無理矢理契約書に署名させられ,それを根拠にAV出演を強要された,というような報道を見ると,「相談してくれれば絶対に止めてあげたのに」と思います。
もちろん,自分が遭っているトラブルが弁護士に相談するような類のことなのかも思いつかず,弁護士に相談するなどという選択肢を思いつかない状況に追い込まれていたりするからこそそのような被害にも遭うのでしょう。
また,弁護士に相談すること自体が,一般の人にとってはまだまだ心理的な抵抗があるのは,私たち業界の責任でもあると思います。
ただ,それでも,相談しさえしてくれれば,という思う機会が多いのも否めません。
■相談していただいたからといって,名案をご提示できるとは限りませんし,何の役に立たないこともあるかもしれません。
ただ,この世の中の多くの事柄が「法律」に従って動いているのも事実です。そして,弁護士は「法律」を使うプロです。
お困りのことがあれば,「ダメ元」でもご相談いただいてマイナスにはならないと思います。
人生の一つの「選択肢」として,弁護士への相談をいつも念頭においてください。
■子どものことに関心があります。弁護士になろうと思ったひとつのきっかけも,子どもが安心・安全に育つことに関わりたいということがあります。
なぜ私が子どもに関心があるのか,もう一度考えてみました。
それは,子どもは,まだ「未完成」で,大人の関わり方次第で,よい方向にも悪い方向にも進んでいくからだと思います
(法律の世界では,「可塑性(かそせい)に富む」という言い方をします)。
だから,少年は,大人と違う刑事手続が定められていますし,離婚などの様々な場面でも特別の配慮がなされます。
そして,弁護士は,この手続の中で,「可塑性」を大きく活かせる仕事だと思うのです。
■私たち弁護士が子どもに関わるのは少年事件や,あるいは学校でのいじめ問題でなどです。
これらの事件で難しいのは,先程の「可塑性」に関係して,単にその事件が法的に解決すればいい,というだけでは済まないことだと思います。
例えば,成人の刑事事件であれば,無罪にしたり,有罪でも刑を軽くすることが第一の目標となります。
そして,基本的には,判決が出てしまえば,それで「終わり」です。
他方で,少年事件の場合には,単にその場限りで処分を軽くすればよいというものではありません。
例えば,きちんと子どもと向き合って受け入れることができる家庭環境ではないにもかかわらず,少年院ではなく「自宅に戻ることが本当にその少年にとってベストなのか」を考えなければいけません。
■このように,少年に関わる事件では,何がその少年(その未来)にとって最良なのかを考えることが成人以上に重要になってきます。
私が事件を通じてその少年に関わることができる時間は,ほんのわずかかもしれませんが,その僅かな時間の中で,できる限り,一緒に未来のことを考えて,結論を出していきたいと思います。
少年や子どもに関わる事件についても遠慮なくご相談ください。
是非一緒に考えていきましょう。
■近年,様々な自然災害が発生しています。
例えば2018年9月4日に関西を通過した台風21号の被害については,被害を受けた方,賠償を請求された方のいずれからも,いくつもご相談・ご依頼を受けました。
屋上に設置していた物置が落ちて隣家の屋根に穴を開けてしまった,同じく屋上の建物の屋根が飛ばされて近くのアパートの瓦などを剥がしてしまった,などです。
■法的には,土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を与えたか,が問題となります(民法717条1項)。
つまり,きちんと設置していなかった,その後もきちんと点検していなかったから飛ばされて被害を与えたのかどうか,ということです。
他方で,台風という自然災害であることからきちんと設置していても被害は避けられなかったということも考えられます。
■私は,まずは現場をよく見たうえで,設置状況や近隣の状況はどうなのか,被害の程度などを確認し,基本的には,100か0ではなく,お互いに譲歩して何割かを支払うという形で早期の解決を目指します。
前述の,屋根に穴が開いた件については,被害者の方から台風直後にご相談を受け,直ちに現場に行って確認することが出来ました。
このため,物置の設置の問題状況が早期に確認できたことから,具体的な現場の状況を分析したうえでの説得的な主張ができ,相当な金額で示談をまとめることができました。
■様々な異常気象が続くなか,今後も自然災害による被害が生じる可能性は多いと思います。
他方で,大きな被害ですと,生活状況を建て直すことで精一杯で,なかなか民事の賠償責任にまで,すぐには気が回らないのは当然です。
ただ,災害が生じたら,その状況をよく撮影しておく,という程度でも後日役立つことが多いのです。
このような知識を頭の片隅においていただき,落ち着いたら遠慮なくご相談ください。
■相談に来られる方は,多くの場合,人生の一大事として,一大決心をして弁護士の事務所に来られます。
弁護士と会うのも初めてという方が多く,皆さん緊張しておられます。
■そこで,私は,出来るだけ話しやすいように,リラックスしてもらう雰囲気を心がけます。
「まとまってなくともよいですからまずは思いつくことから話してください」,あるいは「ではこちらから少しお聞きしていいですか」などと,話しやすい形式的なことからお聞きすることもあります。
堰を切ったように話される方には,時間の許す限りお話しいただいて,人心地着いてから,ゆっくりまとめていくこともあります。
■他方で,冒頭に申し上げたように,多くの方にとっては人生の一大事です。
十分な根拠もないまま楽観的なことを申し上げては,かえって相談者のためになりませんし,下手をすれば,労力や時間を無意味に失うことにもなりかねません。
■従って,厳しい結果を申し上げざるを得ない場合は,言い方には気を付けますが,率直にそのことを申し上げるようにしています。
もちろん,その結果を聞いてがっかりされる方もおられます。ただ,極めて低い可能性のために,時間を浪費していただきたくないですし,そのために費用をいただくのも心苦しいのです。
そのことは是非ご理解いただきたいと思います。
○あるブティックの女性経営者が、10年来の女性顧客の洋服代の未払いに困っていました。
顧客は、洋服代を支払うときに、新しい洋服を掛買するなどしていたので、未払残高が増えていきました。
ブティックにとっては大事な顧客ですので、強く催促することを控えていました。
ところが、ある時期から顧客は、ブティックに来なくなりました。経営者は、心配して何度も手紙を送り、支払いを催促しました。それでも一向に支払いがないので、弁護士に相談して裁判を起こしました。
○これに対し、顧客は2年の消滅時効を主張してきました。最後の売買から2年が経過していたのです。
経営者は、何度も手紙で催促しているので、時効で残金が消滅することはないと思っていたのです。
裁判では、判決になれば、ブティックの敗訴が予想されましたが、裁判所の勧告により、顧客も残代金の一部を支払うことで和解が成立しました。
○現在の民法では債権の消滅時効は原則10年になっています。
ところが、例外的に、短期の時効制度があり、商品の売買代金などの消滅時効は2年です。又飲食代金などの消滅時効は1年になっています。
○消滅時効は、手紙で催促しただけではとまりません。
時効にかかりそうになると、内容証明郵便で催促し、それから6か月以内に裁判を起こせば、時効にかかりません。これを時効の中断といいます。
○なお2020年4月から民法の債権関係が大きく改正されます。
消滅時効は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに適用されることになりました。
商品売買代金などの短期の時効はなくなりました。商品売買代金などの消滅時効は、原則5年に延びたわけです。又貸金などの消滅時効も原則5年となります。
■近年,中国の会社と取引を行う日本企業が増えています。大企業ばかりではなく,小さな商社などが企業の請負として,中国の会社に発注することはよくあります。
■中国企業の技術は近年格段に上がってきてはいますが,それでも日本企業が要求する品質に合致しないことがあります。特に大量の製品を発注した場合などは,受注した中国の会社がさらに町の小さな会社に下請けさせることもよくあり,そのような場合には,発注元の要求する基準を満たさないことが起こりえます。
■不良品が少ない場合には話し合いでなんとか解決しているようですが,不良品が大量な場合などには,日本の会社が支払いを拒否することが当然起こりえます。そして,これに対して,中国の会社が日本の弁護士に依頼して,裁判を起こしてくることがあります。
ただ,このような取引の場合,きちんとした契約書もなく,また,品質についても明確な基準がなく,いざ争いとなった場合には,事実関係がかなり複雑になることがあります。
■このような事案においては,当初は,当事者同士で解決しようとすることが多いのですが,専門家の立場からすれば,問題が生じ始めた時点で早期に相談に起こしいただき,文書による合意など適切かつ迅速な対応をしたほうがよい場合が多いのです。
いずれにしても遠慮なくご相談ください。
■「大家より賃料を値上げすると言われたが,応じなくてはいけないのか」との相談を受けることがあります。
■賃貸借契約というのはあくまで「契約」,つまり当事者で決めた約束ですから,賃料も含めて,いずれかが一方的に内容を変更できるわけではありません。
従って,大家さんが一方的に値上げを宣言してきたからといって,これに無条件に応じる必要はありません。また,その申し入れを無視していただけで,これに応じたことになったりはしません。
■但し,契約締結から何年も経過していて,今となっては,賃料が周囲の相場に比較して安すぎたり,高すぎたりする場合があります。そんな場合でも家賃の変更が全く認められないとすればこれは不都合です。
■そのような場合に,賃貸人と賃借人が円満に合意をして変更することはもちろん可能です。
また,いずれかが応じない場合にも,調停を申し立て裁判所に間に入ってもらい話し合って変更をすることが出来ますし,それでも一方が応じない場合には,適切な金額を裁判所に決めてもらうことができます。
■いずれにしても,大家から家賃の増額を求められた,あるいは調停を起こされたなどのことがありましたら,遠慮なくご相談ください。
A:そのようにして作られた誓約書は違法無効で、同業他社に就職できる可能性が高いです。
(解説)
労働者には、憲法上、職業選択の自由が保障されているので、原則として、退職後、同業他社への就職をすることが可能ですし、事業を自ら起業することも可能です。
もっとも、誓約書にサインがしてある場合に、例外的にこの自由が制限される場合があります。
一般論でいえば、会社にとって「秘密」と呼べるような情報の流出を防ぐという正当な目的があり、労働者が退職前に当該秘密に接するような地位・業務に従事しており、禁止業務の範囲・期間・地域が限定されており、かつ、労働者の自由を制限することへの相応の対価を支払っているような場合に、誓約書が有効となるといえます。
相談内容にあるように、本来支払うべき退職金を持ち出して誓約書にサインさせるような場合、そもそも自由意思によらないサインがあるのみで、誓約書は無効となるでしょう。また、期間や期限などを限定していないことも、誓約書が無効となる方向に働く事由といえるでしょう。
ただし、会社から不正に持ち出した顧客情報を使用する行為は違法となる恐れがありますのでご注意を。
判断に迷われた場合には遠慮なく当事務所までご相談ください。
(弁護士 中峯将文)