2018年9月19日

◆収入の資料が少ない中,多額の婚姻費用が認められました(弁護士小林徹也)


■会社社長を相手とする婚姻費用の請求
自分で会社を作り,代表取締役を務めている夫を相手方として,妻の代理人として婚姻費用請求の申立を行いました。
相手方は,一応,会社から給料をもらっているという形をとっており,その資料として源泉徴収票を提出してきました。ただ,ゴルフ代や自家用車についても会社の経費として会社経理から支出しているようであり,源泉徴収票の金額だけが収入とするのは到底不合理なものでした。
   
 
■夫の生活状況について出来る限りの証拠を提出
ところが,通帳などもすべて相手方である夫が握っており,こちらは明確な資料が出せません。
そこで,夫の生活状況(持っているブランド物の衣服の写真,ゴルフに行っている写真など)を出来る限り提出し,「この収入でこんな生活ができるはずがない」と訴えました。
話し合い(調停)では結論が出ず,家庭裁判所に決めてもらうこと(審判)になったのですが,裁判所は,「夫の収入はもっと多い」という判断はしてくれなかったものの,夫も認めざるをえない様々な事実を根拠に,源泉徴収票から認められる金額よりもはるかに多い婚姻費用を認めてくれました。
   
  
■時には「血も涙もある」裁判所
一般の方は,裁判所は,数字を公式に当てはめるように,形式的に事実を法律に当てはめて結論を出していると思われるかもしれません。法律には,そのような計算式が定められていると思っている方も多いように思います。
ただ,私のこれまでの経験からすると,(もちろんいつも,というわけではありませんが)裁判所なりに,「この人を救わなくてはいけない」と考えると,少々理屈を曲げてでも,結論を出すことがあります。つまり,まず「この人を救う」という結論から理屈を考えるのです。
これは決して不当なことではありません。
法律はすべて,憲法13条の「個人の尊厳」を守るためにあります。つまり個人が尊重される結論でなければならないのです。
仮に,形式的な法律の適用がこの結論に沿わないなら,実質的にできるだけこの結論に合うような解釈を行うことはある意味当然なのです。
   

■そこで,私は,裁判所に対して,法的な理屈や,その根拠となる証拠だけでなく,「どうしてこの人を救わなくてはいけないのか。この人を救わないことが個人の尊重という原則に反している。」といったことも積極的に訴えるようにしています。
この件でも,(守秘義務の関係で詳細は言えませんが)理屈とは直接には関係ない相手方の不誠実な態度,それに対して妻である依頼者が出来る限り誠実に対応してきたこと,を訴えました。
そのような訴えに対する答えは,判決の表面には決して現れませんが,よく読むと,裁判官なりの「良心」が現れているような気がします。
   

2018年9月12日

◆不貞相手への慰謝料請求(弁護士小林徹也)


■不貞相手に慰謝料請求はできますか?
「妻とはうまくいっていない」「妻とはもう長年夫婦関係もない」「もうすぐ妻と別れて君と一緒になるつもり」などと言われ、相手の男性に妻がいることを知りながら、関係を続けたあげくに、男性から別れを切り出された女性からの相談を何件もお聞きしたことがあります。
このような場合、その女性から男性に対して慰謝料請求はできるのでしょうか?
   

■不貞の末の慰謝料請求は虫が良すぎる?
もちろん、相手方男性に妻がいることを知って関係を続けた以上、そのような女性から男性に慰謝料を請求するのは虫が良すぎる、という意見もあるでしょう。
法律的にも、このような慰謝料請求を認めることは、かえって不貞関係を保護することになり認められない、というのが原則論・建前論です。
ただ、このような関係もほんとうに様々です。
私が扱ったいくつかの事件では、(守秘義務の関係で詳細は述べませんが)男性側が,妻と別れることを示唆しながら,主導的に女性を誘ったうえ、何年もの交際のすえ、男性側の都合で一方的に別れを切り出したものです。 
女性は、その男性のために様々な機会を逃しました。それも一緒になれると信じていたからです。
そのような事情次第では、資力のある男性が、せめて金銭的な面で一定の「償い」をすることも、女性にとって必ずしも「虫がいい」とは言えないのではないでしょうか。
特に、日本における女性の社会的地位は、男性と比較してまだまだ低く、様々な点で,女性が男性との関係で主体的になることはできません。そして、それは決して当該女性のみの責任ではないと思います。
私が扱った事件でも、示談で済んだものだけではなく、裁判までいったものでも、(もちろん裁判官にもよりますが)裁判官の説得により男性から一定の金額の慰謝料を獲得しています。
   

■法で解決できるのは経済面だけですが…
このような相談を受けた時、私がいつも依頼者の方に申し上げるのは、「法律で解決できるのは金銭面だけです。あなたが味わったすべての苦しみを解決することは到底できません。ただ、自分にとっての区切りとするために、示談をすることも意味があるかもしれません」ということです。
弁護士は、所詮、法律という限られた分野での専門家に過ぎません。ただ、法的な解決が、気持ちの中で一定の区切りになることもまた事実です。
同じくこのような事件でよく依頼者の方に言うのが、弁護士としてではなく、あくまで個人的な意見として、と断ったうえで、「早く前向きに生きたほうがよいですよ」ということです。
もちろんなかなか割り切れるものではないと思いますが,他方で,客観的な第三者から「どうにもならないことである」という認識を示してもらうのも意味があることもあり得ます。
いずれにしても,依頼者の方とよく話し合って、よい解決を目指したいと思います。
   

2018年8月29日

◆離婚事件と子どものこと(弁護士小林徹也)


■最近離婚事件の受任が増えています。
出来る限り身内で解決してしまおうとする発想から、徐々に、第三者的な機関で合理的に解決してもらったほうがよい、という考えが浸透してきているせいでしょうか。
そのこと自体は必ずしも悪いことだとは思いません。
   

■ただ、私がいつも気になるのは、子どものことです。
夫婦は、それぞれが一応は、自分の選択で選んだ相手です。
もちろん、問題のある配偶者の法的責任を否定するものではありませんが、ある意味、自分で選んだのだから仕方ない、という側面は否定できません。
   

■他方で、子どもは生まれてくる環境を選べません。両親を選ぶことはできません。
そして、子どもたちは、幼くても、両親の仲についてとても敏感です。
また、思った以上に気を遣っています。このような敏感で繊細な子どもの心を最も苦しめるのは、親権者の選択の意向を確認される時のように思います。
   

■私が扱った事件においても、離婚自体には合意していても、父親も母親も「子どもは自分のほうになついている」と言って親権でもめることがよくあります。
このような場合、父親も母親も積極的に嘘をついている場合は少ないように思います。
むしろ、子どもが、それぞれの親から例えば「お父さんとお母さん、どちらが好き」などと聞かれた時に、聞いた親の事を慮って、その親に好意を示す表現をすることが多いのです。
   

■依頼者の方は、このような場合、「私のほうに来たいと言っている」と主張されますし、私自身もそれを否定する根拠があるわけではないのですが、子どもの繊細な心情を出来るだけ共に考えるよう心がけています。
   

■また、子どもの年齢にもよりますが、場合によっては家裁の調査官という立場の専門家が、子どもの意向を確認する場合もあります。
私も経験したことがありますが、専門家と言えども短時間での様子からの判断ですから、絶対に正しいとは言えない場合もあり難しいところです。
   

■生まれてくる環境を選べず、また、自らの気持ちをきちんと表現する力も備わっていない子どもらが紛争に巻き込まれている姿を見ると、いつも心が痛みます。

2018年8月22日

◆刑事弁護の要である起訴前弁護(弁護士三上孝孜)


■起訴前の弁護活動が重要です
市民が犯罪を犯したという疑いをかけられると,警察や検察による捜査が始まります。
必ずしも身柄を拘束されるわけではありませんが,逮捕され身柄が拘束されてしまうと,その被疑者の日常生活に重大な影響を与えます。身柄が拘束されている場合,逮捕から起訴まで長くても23日間です。
そして,起訴されると,裁判にかけられることになり,さらに長期化します。裁判になると,身柄拘束のものでも,判決まで数ヶ月から半年くらいかかることもあります。
従って,刑事弁護において一番良いのは、起訴前の段階で決着をつけて、不起訴に持ち込むことです。
   

■起訴前の弁護活動ではどのようなことをするのでしょう
私は,依頼を受ければ,緊急を要する事件であれば,できるだけその日のうちに、被疑者に接見(面会)し,事情をできるだけ詳しく聞き取ります。また,関係者にも連絡をし,証拠収集に努めます。
並行して,警察や検察に対し,電話や面会などで捜査の進捗や情報の収集に努めます。
警察や検察官は,捜査情報については,とかく秘密にしたがるものですが,何度も尋ねることにより,根負けして、ぽろりと重要な情報を教えてくれることがあります。
また,このように何度も連絡をすることにより,検察や警察に,「いい加減な捜査で起訴することはできない」ということを理解してもらうのです。
   

■不当な捜査に対する厳重な抗議
また,捜査段階で不当な自白調書が取られることが多く,これをどのように防止するかは刑事弁護人の重要な課題です。
この点,私は,被疑者から,「取調官から威圧的な取調を受けている」と聞けば,警察や検察に対して,何度も電話で抗議するのみならず,文書による申し入れを行うこともあります。また,不当な取調が行われているおそれがある場合には,できるだけ接見に行き、被疑者を励ますようにしています。
   

■迅速な証拠収集が大事
また,迅速に証拠を集めることが重要です。私が扱ったある事件では,私が,被疑者のアリバイを裏付ける出店時刻の記録を当該店舗に赴き確認した,僅か数十分後に警察が訪れ、当該証拠を差押えた,ということがありました。
この出店記録がアリバイを明らかにするものとなり,この被疑者は不起訴になりました。
起訴前に警察が証拠を開示することはありませんから,もし,この行動が数十分遅れれば,この被疑者は起訴され,長期間の裁判の中でようやくこの証拠を入手することになったでしょう。あるいは,検察は,最後までこの証拠を出さなかったかもしれません。
このように起訴前弁護では,迅速な行動が重要となります。
   

■万が一,皆さんや、皆さんの親族,知り合いが逮捕されたりした時,そして身近に信頼できる弁護士がいない時には,遠慮なくご相談ください。

2018年8月8日

◆不貞問題に関する相談が増えています(弁護士小林徹也)


■不貞問題に関する相談が増えています。
夫が別の女性と不貞をしたので慰謝料を請求したい,あるいは不貞相手である男性の妻から慰謝料を請求された,などです。
今回は請求された場合のことを中心に述べたいと思います。
   

■不貞,すなわち配偶者がいることを知りながら,夫である男性,または妻である女性と男女関係を持つことは,法律上,違法行為と評価されます。
私も弁護士である以上,これを正当化することはできません。
他方で,相談を聞いていると「不貞を行った人=社会的に不適格な人」と決めつけることはできないように思います。
   

■相談に来られる方(たまたま女性が多いのですが)の多くは,極めて普通の常識を持っておられます。
逆に,だからこそ,「自分が誤ったことをした」という罪の意識にさいなまれ,憔悴しておられる方が多いように思います。
そのような場合,弁護士として具体的に出来ることは,相談者の経済的な負担(つまり支払う慰謝料の金額です)を出来るだけ減額することがメインとなりますが,他方で,「弁護士に相談に来られた以上,経済的な問題と割り切って前に向かって進んでください」と励ますようにもしています。
   

■乱暴な言い方かもしれませんが,このような種類の事件をお受けして,最終的に解決しなかったということはありません。
弁護士に相談することは勇気がいるかもしれませんが,私としては,出来るだけリラックスしていただけるよう配慮しています。
まずは,お気軽にお電話ください。

2018年7月24日

◆セクシャルハラスメント-勘違いしている男性(弁護士小林徹也)


■最近話題のセクシャルハラスメントですが,様々な場面での相談をお聞きします。
例えば,飲食店での店長による女性従業員に対する性的言動や接触というものがありました。
このような場合の加害者である男性は,必ずしも,「いかにも」という人ばかりではないのです。ずる賢い男性は,相手を選びます(もちろんその判断は間違っているのですが)。
つまり一定の範囲の女性従業員からは,「そんなことをする人には見えない」などと言われていたりするのです。
   

■ところが,「こいつには言ったり触ったりしても文句は言わないだろう」と当たりをつけた女性に対しては,例えば,体型の話や,男性との性交渉の内容などの話題を出してくるのです。
もちろん,従業員である女性は,なんとか働き続けたいと考えているので,できるだけ聞き流そうとします。すると,男性は「嫌がっていない」と勘違いしてエスカレートしていくのです。
このような職場で声を上げることはなかなかできません。私のところに相談に来られた方も,退職してからの場合がほとんどでした。
   

■もちろん,男性側から相談を受けることもあります。
男性は往々にして「この程度ではセクハラには当たらないと思うがどうか」という相談ですが,多くの方は少し勘違いしていることが多いのです。
違法(つまり金銭賠償をするほどのもの)というレベルかどうか,は別としても,当該行為がセクシャルハラスメントと言えるかどうかは,被害者が不快に感じたかどうかなのです。そして,いったん被害者がそのような感情を抱き,それが業務に影響を与えた以上,職場の健全な人間関係を維持するという観点からは,そのような行為は許されないのです。
   

■いずれにしてもそのような被害に遭われましたら,まずはメンタルなサポートが必要ですが,きちんと加害者に理解させることは,立ち直る一つのきっかけになることもあると思います。遠慮なくご相談ください。

2018年6月27日

◆ある不起訴事案-司法取引の危険性(弁護士三上孝孜)


2018(平成30)年6月から、刑事裁判に、司法取引という制度ができました。
財政経済犯罪や薬物銃器犯罪などについて、被疑者・被告人が、他人の罪を検察官に供述すると、検察官は、供述した者を、不起訴にしたりすることができるのです。
そのためには、検察官と被疑者・被告人だけでなく、弁護人も同意して、3者で合意書面を作ることが必要です。検察官は、警察官に、この手続に協力させることもできます。
   

この制度は、被疑者・被告人に見返りを与えて、検察官が証拠を得やすくしようとするものです。
ただ、被疑者・被告人が嘘を言った場合、無実の人に罪を着せることになってしまう問題があります。
   

私が担当した大麻譲渡事件で、被疑者の嘘で、無実の若者が逮捕されたことがありました。被疑者が、大麻所持で逮捕されたとき、友人の若者から買ったと嘘を言ったので、その若者が大麻譲渡罪で逮捕されました。被疑者は、別の先輩から買ったのに、その先輩の名前を出すのが怖かったので、友人の名前を出したのです。
   

私は、逮捕された若者の弁護をしました。先に釈放されていた被疑者は、嘘を言ったことを別の友人に打明けていることが分かりました。そこで、被疑者と打明け話を聞いた友人に事務所に来てもらい、被疑者から本当の話を聞きました。
被疑者は、嘘を言って申し訳ないと謝りましたので、その様子をビデオにとり、その話を供述録取書にまとめ、被疑者に署名してもらいました。
   

これらの新証拠を検察官に提出したところ、検察官は、被疑者に確認の上、若者を不起訴処分にしました。
   

司法取引にはプラス、マイナスの両面があります。

2018年5月30日

◆増えてきた中国企業との訴訟(弁護士小林徹也)


■近年,中国の会社と取引を行う日本企業が増えています。大企業ばかりではなく,小さな商社などが企業の請負として,中国の会社に発注することはよくあります。
   

■中国企業の技術は近年格段に上がってきてはいますが,それでも日本企業が要求する品質に合致しないことがあります。特に大量の製品を発注した場合などは,受注した中国の会社がさらに町の小さな会社に下請けさせることもよくあり,そのような場合には,発注元の要求する基準を満たさないことが起こりえます。
   

■不良品が少ない場合には話し合いでなんとか解決しているようですが,不良品が大量な場合などには,日本の会社が支払いを拒否することが当然起こりえます。そして,これに対して,中国の会社が日本の弁護士に依頼して,裁判を起こしてくることがあります。
ただ,このような取引の場合,きちんとした契約書もなく,また,品質についても明確な基準がなく,いざ争いとなった場合には,事実関係がかなり複雑になることがあります。
   

■このような事案においては,当初は,当事者同士で解決しようとすることが多いのですが,専門家の立場からすれば,問題が生じ始めた時点で早期に相談に起こしいただき,文書による合意など適切かつ迅速な対応をしたほうがよい場合が多いのです。
いずれにしても遠慮なくご相談ください。

2018年3月6日

◆家賃の値上げ(弁護士小林徹也)


■「大家より賃料を値上げすると言われたが,応じなくてはいけないのか」との相談を受けることがあります。
   

■賃貸借契約というのはあくまで「契約」,つまり当事者で決めた約束ですから,賃料も含めて,いずれかが一方的に内容を変更できるわけではありません。
従って,大家さんが一方的に値上げを宣言してきたからといって,これに無条件に応じる必要はありません。また,その申し入れを無視していただけで,これに応じたことになったりはしません。
   

■但し,契約締結から何年も経過していて,今となっては,賃料が周囲の相場に比較して安すぎたり,高すぎたりする場合があります。そんな場合でも家賃の変更が全く認められないとすればこれは不都合です。
   

■そのような場合に,賃貸人と賃借人が円満に合意をして変更することはもちろん可能です。
また,いずれかが応じない場合にも,調停を申し立て裁判所に間に入ってもらい話し合って変更をすることが出来ますし,それでも一方が応じない場合には,適切な金額を裁判所に決めてもらうことができます。
   

■いずれにしても,大家から家賃の増額を求められた,あるいは調停を起こされたなどのことがありましたら,遠慮なくご相談ください。

2017年10月16日

◆痴漢えん罪事件で不起訴を獲得(弁護士三上孝孜)


■ 電車内の痴漢えん罪事件で、不起訴処分を獲得したケースがありますので紹介します。
午前のラッシュ時、満員の電車内で、男性が、携帯を持った右手をダウンジャケットのポケットに入れて、立っていました。友人からラインが入り、バイブが振動したので、携帯を持った右手をポケットから出しました。そのとき、前の女性から「この人チカンです!」と言われ、出した右手をつかまれました。右手は女性の体に当たったかも知れません。
そのとき、横にいた男性からも、左手をつかまれました。二人につかまれて、次の駅で駅長室に連行されました。警察に通報され、女性の尻を触ったとして、私人による現行犯逮捕とされ、警察に留置されてしまいました。
   

■ この事件で、携帯で逮捕を聞いた友人から、私たちの事務所に緊急の連絡があり、私が相談にのりました。
すぐに警察署の生活安全課に電話をし、私人による逮捕の説明を聞き、接見(面会のこと)に行きました。本人は否認していたので、励まして、絶対に認めないように説得しました。そして警察に強く釈放を要求しました。再三の要求・交渉の結果、その日の夕刻に、友人が身柄を引受けることにより釈放させることが出来ました。検察庁に身柄付きで送致されることもなく、裁判所への勾留請求もありませんでした。
   

■ その後、警察での任意調べが1回ありました。検察庁に書類送検されましたが、検察官からの呼出しはなく、嫌疑不十分で不起訴になりました。
痴漢を理由に現行犯逮捕されたのに、無実を明らかにし、逮捕日の夕刻に釈放になり、早期に不起訴処分になったのです。えん罪が晴らせて、私は本人と共に喜びました。
   

■ この事件でのポイントは次のようなものです。
1 当日ダイヤの乱れがあったので、駅に弁護士会を通じて照会し、電車の駅発着時刻を明らかにし、逮捕された時刻を正確に特定できた。
2 その時刻ころに、本人と友人のライン記録が残っていた。
3 携帯を持った手が女性に当たったとしても、そのような状態で女性の尻を触れないことを明らかにした。
4 逮捕された数時間後に接見が出来て、動揺している本人を励まし、自白を防げた。
5 何度も釈放要求し、速やかに釈放させることができた。
6 ポリグラフ(嘘発見器)検査をするとの警察要求を拒否させ、応じさせなかった。
   

■ この件は良い条件が揃いましたが、不幸にも痴漢を疑われて逮捕されたときは、すぐに当番弁護士などに依頼すると共に、警察官から自白を迫られても、絶対に認めないことが大切です。

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