■他の相続人が被相続人のお金を生前勝手に使っていた
他の相続人が,生前に被相続人の預貯金などを勝手に使っており,それが相続後に判明したことから,それを取り戻せないか,という相談を時折受けます。
例えば,被相続人である母親が亡くなったので,通帳を確認したところ,質素な生活をしていた母親がおよそ使うことが考えられないような大金が,生前に出金されていた。その通帳を生前に管理していたのは近所に暮らしていた長男であった。他の相続人が長男に聞いても知らない,という。
そこで,私は,他の相続人から依頼を受けて,その長男に裁判を起こしたことがあります(依頼者のプライバシー保護のため若干事案を変えています)。
■この長男は,「自分は出金に立ち会ったことはあるが母親が勝手にしたことでその金を母親がどうしたかは知らない」と主張しました。
そこで,私は,裁判において,長男に通帳を見せることを要求しました。長男は,なかなか開示に応じようとしませんでしたが,裁判所の説得もあり,ようやく開示しました。すると,母親が亡くなる直前に,たくさんのお金を使っていることが判明しました。
また,母親の通帳を見ると,大変質素に暮らしていることもわかりました。
■こうやって,集めた様々な証拠を前提に,長男に尋問を行いました。
果たして,長男は,いろいろと矛盾した証言をしました。
例えば,長男は母親と仲良くしていたと証言する一方で,母親が大金を引き下ろしても何も聞かなかった,などと述べたのです。
しかし,それまで質素に暮らしていた母親が大金を下ろせば,詐欺に遭っているのではないかなどと,子どもなら当然心配するはずです。それを何も聞かないのは明らかに不自然です。
私は,法廷で,このような矛盾を多く引き出しました。
果たして,判決は,この長男に対して,他の相続人に引き下ろしたお金を相続分に応じて返すよう,求めるものでした。
■このような事件では,「これさえあれば勝てる」という証拠がなかなかないのが普通です。そこで,様々な事情や証拠を,できるだけ集めて,これを尋問で上手に使うことがポイントとなります。
相続人同士の関係は,かえって赤の他人よりも難しいことがあります。
もし困ったことがありましたら遠慮なくご相談ください。