■別項で「モラハラ」夫について触れたところ,その後もいくつも,「モラハラ」夫との離婚事件を扱いました。
ここに,「モラハラ」(モラルハラスメント)とは,「言葉や態度で巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力」というものだそうです。
不貞や借金を原因とした離婚は別として,離婚事件によく見られる夫は,このような「モラハラ」の常習者であることが多いようです。
そこで,「モラハラ夫」について少し特徴をまとめてみたいと思います(実際に扱った事例での特徴を抽象化したものです。また,すべての条件に当てはまる,という趣旨でもありません)。
■外面はよく仕事も結構真面目にする
「モラハラ夫」は,体裁を重んじ外面はよく,妻の友人などにも「よき夫」を演じていることも多いのです。
このため,妻はなかなか周囲に理解してもらえないことがよくあります。
また,仕事をよくする以上,経済面で家計費を中心的に担っていることが多いようです。
■妻や子は自分の「所有物」と思っている
基本的に妻や子を独立した一個の人格として見ていません。従って,「モノ」として大事に扱うことはありますが,自分の思い通りに動かないと大変機嫌が悪くなります。
「誰の稼ぎで食べているんだ」が口癖の方が多いようです。
■妻との関係で自分が絶対に正しいと思い込んでいる
とにかくモラハラ夫は,家庭内では自分が絶対に正しいと思っています。従って,妻や親族がどれほど説明しても絶対に自分の考えを曲げません。
■妻が納得するまで延々と話し続ける
そして,自分の考えが受け入れられないと,延々と(何時間も,場合によっては深夜まで)話し続け,妻が「自分が間違いでした」と認めるまで止めません。
このようなことが長年続くため,妻はそのうち,「マインドコントロール」されてしまい,夫の言っていることは常に正しく,自分が叱られるのが当然だと思いこむようになってしまいます。
家庭では,夫が主導権を握り,妻は夫の機嫌ばかりを伺うようになっていきます。
夫は,妻の行動にいちいち文句をつけたり,舌打ちをしたりします。また,機嫌の悪い時は無視を決め込みます。
これに対して,妻は,限界に至るまでそのような生活を続けることが多いようです。
■感情の起伏が激しい
とことん自分の主張を述べたかと思うと,翌日には別の人間のように優しくなったりします。
このため,妻は,「このような優しいところもあるのだから」とついつい自分を犠牲にして我慢してしまい,なかなか離婚に踏み出せないことが多いようです。
■両親や「家」を重んじる
モラハラ夫は,意外と自分の両親や「家」というものを大事にする傾向があります。
このため,離婚する条件として,今後妻や子が夫の姓を名乗らないことを主張してくる場合がよくあります。
■とても強い自己愛
自分のことには贅沢にお金を使うことが多いようです。
他方で,妻のみならず自分以外の人間に金を使うことを嫌う傾向があることから,モラハラ夫は意外と不貞に走りません(愛人にすら金を使いたくないようです)。
■このような傾向が分かったからといって直ちに救われるわけではありませんが,他方で,このような夫のもとで「私が間違っているのだろうか。私さえ我慢すればよいのだろうか」と悩んでいる方も多いようです。
直ちに救いの手となるかは分かりませんが,上記のような夫のもとで離婚を考えておられる場合には遠慮なくご相談ください。
別居後や離婚後には別人のように生き生きとされている依頼者をこれまで何度も見てきました。